地域活性化の取り組みとして、各地で盛んに行われるのが催事・イベントである。愛媛県愛南町も例外ではなく、地元の名産品をPRする祭りや観光行事が折々に開かれ、町外からの来訪者で賑わいを見せる。こうした催しは地域の魅力を外に発信し、交流人口を増やすという点で確かに意義深い。民俗学の用語を借りれば、これは「ハレ」の活動である。非日常のよそ行きの顔で地域を飾り立て、人を呼び込む。それはそれで、大切な役割を果たしている。
見落とされがちな「ケ」の現実
しかし、地域に人が根づき、暮らしを続けていくためには、「ハレ」だけでは足りない。問題は「ケ」、すなわち何でもない日常の中にある。これは移住者だけの話ではない。長年この町で生きてきた在来の町民にとっても、買い物・医療・交通・近隣づきあいといった日常生活の課題は、年を追うごとに切実さを増している。若い世代が町を離れ、高齢化が進む中で、かつては当たり前にあった生活インフラが少しずつ失われつつある。地域が「ハレ」の演出に力を注ぐ一方で、「ケ」のサポート体制が手薄なままでは、移住者が定着しないばかりか、在来町民の生活の質そのものが静かに損なわれていく。
「ケ」を支える具体的な施策
では、日常生活の「ケ」を支えるために何が必要か。第一に、生活情報へのアクセス改善である。ごみの出し方から地域のかかりつけ医、農協・漁協の利用方法に至るまで、移住者には見えにくい情報を整備することは、同時に在来町民が地域資源を改めて把握し直す機会にもなる。第二に、住民同士をつなぐコミュニティの場づくりである。移住者と在来町民が共に参加できる交流の場や、困ったときに気軽に相談できる「地域の世話役」を育成・配置することで、地域全体の支え合いの文化を育てたい。第三に、移動手段の確保である。自家用車に頼らざるを得ない地域構造を前提としつつも、高齢の在来町民や車を持たない移住者を共に視野に入れた、デマンド型乗り合いタクシーや買い物支援サービスの拡充を検討すべきである。
「ハレ」と「ケ」の両輪で
地域活性化は、非日常の魅力を発信する「ハレ」と、日常生活を丁寧に支える「ケ」の両輪があって初めて機能する。催事で人を呼び込む努力と同じ熱量を、町に暮らすすべての人の「ふつうの暮らし」を守る仕組みづくりに注ぐこと――それが、移住者にとっても在来町民にとっても、愛南町を真に住み続けたい場所にする道ではないだろうか。

